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77話 椅子を二脚

Author: 八月 猫
last update publish date: 2026-08-06 09:01:55

 鍵の受け取り日が決まると、新しい部屋は急に現実になった。

 まだ私はそこに住んでいない。

 家具もない。

 カーテンもかかっていない。

 それでも、スマホのカレンダーに入った予定を見るたびに、胸の奥が小さく揺れる。

 鍵受け取り。

 その五文字だけで、生活がひとつ動く。

 会社帰り、私は家具店へ寄った。

 大きなものを買うつもりはなかった。

 ベッドや冷蔵庫は後で考えなければいけない。

 でも今日は、テーブルと椅子を見たかった。

 売り場には、二人掛けのダイニングセットや、広いソファ用のローテーブルが並んでいた。

 以前の私なら、無意識に二人で使えるものを探していたと思う。

 悠斗が座りやすいか。

 部屋で邪魔にならないか。

 食事を並べやすいか。

 そんなことばかり考えていた。

 今は違う。

 私が使いたいか。

 

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第1章 第1話 今日はご飯いらない

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第4話 既読スルー

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第3話 母親みたい

     翌朝、目が覚めるとソファの上に毛布が落ちていた。 悠斗はベッドに戻ったらしい。 私はぼんやり天井を見上げたまま、小さく息を吐く。 身体が重い。 昨日はちゃんと寝たはずなのに、疲れが抜けていなかった。 時計を見る。 午前六時半。 あと三十分で悠斗を起こさないといけない。

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